2019年7月24日水曜日

ゲームによるメンタルヘルスの悪化は無し。一方SNSとテレビはうつ病との相関が認められる。カナダの学生を対象にした調査結果


ゲームによるメンタルヘルスの悪化は無し。一方SNSとテレビはうつ病との相関が認められる。カナダの学生を対象にした調査結果



しばしばその悪影響について語られがちなゲームだが、うつ症状に繋がるメンタルヘルスへの影響については無関係なのかもしれない。米国医師会が発行している医学雑誌JAMA Pediatricsは7月15日、10代の若者におけるデジタルメディアとメンタルヘルスの影響についての調査研究結果を公表した。それによると、ゲームのプレイ時間とうつ症状の徴候との間に相関関係はみられなかったが、SNSの利用とテレビの視聴については相関関係があることがわかった。
カナダの学校生徒を対象に4年間の質問調査
JAMA Pediatrics(JAMAはThe Journal of the American Medical Associationの略。Pediatricsは小児科)は7月15日、カナダで行った調査研究の結果について公表した。調査内容は10代の若者におけるデジタルメディア利用とメンタルヘルスへの影響について。調査の詳細については以下のとおりだ。

・3826名の学校生徒を対象に、それぞれ四年間かけて調査を行った。
・カナダ・モントリオールにある学校の生徒が対象。
・7学年(年齢的に日本の中学1年に相当)の生徒を対象に調査を開始する。
・被験者に対し、デジタルメディアの利用時間が一日どれくらいであるか尋ねる。
・同時に、うつ症状の徴候に繋がるようなさまざまな経験がなかったかについても尋ねる。(例えば、孤独に感じることはなかったか、悲しくはなかったか、希望を持てないと思ったことはなかったかなど)
・デジタルメディアの利用については四種類を設定。SNSの利用(FacebookやTwitterなど)、ビデオゲーム、テレビ視聴、その他のPCの利用。
・調査期間は2012年~2018年。

調査の結果、SNSの利用とテレビ視聴の時間が増加すると、うつ症状の徴候を示す生徒の割合も増加することがわかった。特にSNSの利用については、一年のうちに一日当たりの利用時間が1時間増加するだけでも同じ年のうつ症状の徴候の増加が確認できるほど顕著な相関関係が確認することができた。

一方ビデオゲームについては、一日のうちのプレイ時間が延びてもうつ症状の徴候の増加との相関関係はみられなかった。ちなみにその他のPCの利用については、四年間を通して常に一日の利用時間が長い場合はうつ症状の徴候の増加との相関はみられたが、単年のみの利用時間の増加では相関が確認できないなど相関関係は軽微なものだったようだ。

この結果を受けてJAMA Pediatricsは、10代の若者においてSNSの利用とテレビ視聴はうつ症状の徴候と相関関係があると結論付けている。そして、SNSの利用とテレビ視聴がうつ症状の徴候を助長している可能性があり、必要な対応策をとるべきだ、としている。

「この発見には驚き」
この調査研究の結果について、複数の海外メディアがこれを報じている。カナダのニュースメディアであるThe Globe and Mailは、この調査研究チームの一員であるPatricia Conrod博士のコメントを次のように紹介している。「すべての種類のデジタルメディアの利用がうつ症状と関係があるわけではありませんでした。関係があったのはテレビとソーシャルメディアだけです」Conrod博士はモントリオール大学の精神医学の教授であり、またセントジャスティン大学医療センターで第一カナダ研究委員長も務める人物だ。

The Globe and Mailは、Conrod博士ら研究員達が立てていた三つの仮説についても紹介している。一つ目は「置換え仮説」というもの。デジタルメディアを利用する時間によって他の活動、例えば運動をするなどの精神的によい影響を与える活動をする時間と置き換わってしまうというものだ。しかし今回の調査結果からはこの仮説を裏付ける証拠は得られなかった。もしこの仮説が正しいなら、ビデオゲームのプレイ時間の増加においてもメンタルヘルスへの悪影響が確認できるはずだからだ。

二つ目は「上位社会との比較仮説」。理想化された肖像が若者の心に有害となるといったものだ。現実的な失敗に晒される10代の若者にとって、SNSの中でみんなが自分よりもうまくやり楽しそうにしている様子はそれを見ている若者の自尊心を傷つける可能性がある。この仮説はこの調査結果に対する一つの説明になり得るのではないかとConrod博士は見ている。

そして三つ目は「強化スパイラル仮説」。人々は自分の精神状態にあった内容を選択しそれを消費する傾向がある。うつ症状を促進させるようなデジタルな活動に没頭している若者は、よりうつ症状を促進するような内容のものに引き込まれていく、といったものだ。

「この発見には驚かされましたね」カナダの公共放送局であるCBCにそうコメントしたのはこの調査研究チームの別の研究員であるElroy Boers博士だ。「ビデオゲームは少し幸せにしてくれるようです。これはいい気晴らしですね」

ゲーマーにとっては福音。しかしSNSは悪者なのか?
今回のこの調査研究結果は、とかく容疑者扱いされがちなゲームについてその冤罪を晴らしてくれた形になるので、一人のゲーマーとしては喜ぶべきことなのかもしれない。しかし筆者はこの調査結果について、一部やや懐疑的に思えてしまう部分がある。この調査結果からSNSとうつ症状との間に相関関係があるとは言えても、因果関係があるとまでは言い切れないのではないかと思うからだ。

統計学において使われる表現で「相関関係は因果関係を含意しない」という言葉がある。相関関係があるからといって因果関係があるとは決め付けられない、という意味だ。とある事象において、Aという原因によってBとB´という現象が起きていたとする。しかし調査ではBとB´のみしか対象としていなかった。すると調査の結果、Bが多いとB´も多いということがわかった。このことからBがB´の原因であると結論付けてしまう。B´の本当の原因はAであるにもかかわらずこういった誤った結論に達してしまう。これを「虚偽の原因の誤謬」という。たとえば今回のケースで言えば、人間関係を気にする性格というものがもしあったとして、そういう性格の人はデジタルメディアの利用においてSNSにより時間を割きやすい。それと同時に、そういう性格の人はSNSをやっていようがいまいが精神を病みやすい傾向にある。そういった可能性もあるのではないかと、この調査研究結果の考察に対して少しだけ疑義を感じてしまった部分があった。

ゲームに罪はない

ともあれ、今回の調査研究結果は、ゲームに罪はない、ということを示してくれた。一方で、WHO(世界保健機構)は中毒性を理由にゲーム依存を精神疾患と位置づけるなど、ゲームは悪影響であるとの見方も根強い。はたしてゲームは人間にとって悪影響なのか否か。今後、更なる多角的な研究が行われることに期待したいところだ。

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